市民との対話どう構築 (H21.10.16 中国新聞)
■平成21年10月16日 中国新聞
市民との対話どう構築
大田市長選 18日告示
医師確保や処分場問題
任期満了に伴う大田市長選が18日告示される。現時点、再選を目指す
現職の竹腰創一氏(59)と、新人の会社社長温泉川孝氏(68)がいずれ
も無所属で立候補を表明している。
市立病院の医師確保、難航する不燃ごみ処分場建設など課題が山積す
る中、リーダーの手腕が問われる。
外科医3人全員の引き上げを広島大から通告された私立病院。1人が9
月末で退職し、残る2人も来春までに退職の見通しだが、市は広報チラシ
などへの説明を「さらに厳しい状況になる」との表現にとどめている。
市民の間で署名活動などの動きはない。「市立病院を守る会(仮称)」世
話役の渋谷次夫さん(59)=鳥井町=は「病院側に意見交換会の開催を
申し入れたが、応じてもらえていない」と明かす。
看護師不足による5階病棟の休止に加え、内視鏡検査を担当する消化器
内科医の不在も重なり、2008年度の病床稼働率は61.9%と05年度より
約22ポイントダウン。収支は3年連続赤字で、08年度は5億4千万円に上
った。
医療関係者は「外科以前に、内視鏡検査ができない時点で総合病院と
して致命的」と口をそろえる。渋谷さんは「市民に病院の危機が伝わって
いない。大田市出身の医師にUターンを呼び掛けるなど市民にもできるこ
とはあるのだが」と案じる。
仁摩町宅野の民有地への不燃ごみ処分場の建設では、7月から予定地
の測量が始まったものの、面積で3分の1を占める反対地権者4人の土地
では着手できていない。
計画に反対する「宅野の自然と生活環境を守る会」(山上光俊代表)は、
予定地が住宅地や海に近いことを問題視。候補地選びの段階で約26億
円だった事業費が、予算化の段階で約37億円に跳ね上がった経緯を「候
補地選びの前提が覆ったのに、説明不足で押し切った」と指摘する。
反対地権者4人は「守る会」を交渉窓口に指定する一方、市は「地権者と
直接話したい」として、同会との協議を拒否。5月に地権者説明会が始ま
って以降、5か月たっても平行線のままだ。
既存3か所の処分場は来秋にも満杯になる。外周をかさ上げする延命策
もあるが、市民生活部は「新処分場の完成見通しが立たない段階で、既
存施設の地元に延命策を打診できない」(冨田正治部長)と頭を抱える。
市はまちづくりの基本方針として、市民との「協働」を掲げる。迫る危機に
ついても市民と情報を共有し、対話を重ねる姿勢が求められる。
交渉は「守る会」に一任するとした地権者の申し入れを無視し、地権者宅にた
だ執拗に「説得」に訪れる市職員。そこには対話の姿勢はまったく見られない。
財政難のなか、当初見積りから約11億円も膨らんだ事業計画を、ごり押ししよ
うとする大田市のやり方は、市民不在の政治としかいいようがない。
これほどまでに市民感情からかけ離れた運営をする竹腰市政に、大田市民は
そろそろ異を唱えるべきではないだろうか。