要望と公開質問状の内容について、少し詳しく説明します。
★まず、「記1.」で述べた「生活環境影響調査」に不備があるという点について。
「生活環境影響調査」報告書が、平成22年10月付になっていますが、大田市が、
「埋め立てピット施設の配置変更」の住民説明を行ったのは、そのわずか1ヶ月
前の2010年9月です。
つまり、一般縦覧に供された「生活環境影響調査」は、変更以前の施設配
置に基づいたものであり、配置変更を行うのであれば、この調査結果はほと
んど意味がないということになります。
ちなみに、この「生活環境影響調査」の元になる地質調査の報告は、平成21年
12月付となっています。
次の図で、この時に行われた地質調査の範囲と、当初の埋め立てピットの位置、
そして配置変更後の位置がわかります。
当初の位置が奥に長い配置なので、地質調査の縦横のガイドラインも奥に長く
とってあります。また、赤丸がボーリング調査位置ですが、計8本のボーリングが
行われています。
このボーリング位置で水質調査が行われており、これが後の汚染を検知する観
測井戸を兼ねているのだとすれば、稼動後に万一事故が起きてもわからないと
いうことになります。
★次に、「記2.」で述べた計画地の地盤・地質調査について。
上図からもわかるように、ほとんどのボーリング位置は古いガイドライン内にあり、
配置変更後の施設に直接関係するのは、BV No.8 のわずか1本のみです。
計画地は軟弱地盤であるとの住民の指摘に対し、大田市は「N値50以上の固い
基礎地盤の上に埋め立てピットを据えるため、安全である」と主張してきました。
しかし実際には、N値50以上というのが決して固い地盤ではないことが、
この調査結果には記載されていました。
このカラーの写真が、ボーリングで採った土のサンプルです。サイドに0~9、1~10
とあるのが深度です。そして左のグラフがN値の推移。
上部に深度は8mとあります。つまり、8mでN値が50以上となったので、そこで堀るの
を止めたということです。
下部の地盤状況の表の上から4段目のところ、地盤名が「凝灰岩・風化岩」、記号が
DM2、層厚が2.7mで、深度が5.3~8mの層のところ、N値が50以上となっています。
この層が、大田市が固い基礎地盤といっているところですが、土質・岩質等の説明に
は、「5.3mより泥質凝灰岩の軟岩質となる。コアは礫~岩片状を呈しハンマー打撃
で容易に砕ける。・・・」とあります。決して固い地盤なんかではありません。
下記が施設の断面計画図です。
確かに「DM2:風化岩層」の上に据えられているのが確認できます。
中央部やや右に、棒のように立っているのが、BV No.8 のボーリングです。コンクリー
トピットのようやく下部に達するぐらいしか掘られていないのが分かります。
そして、そのコンクリートピットの右角の赤い破線のマークですが、記述があいまいに
なっています。というのも、このあたりは元の地質調査の範囲から外れているからであ
ろうと思われます。
つまり、これを見ただけでも急峻な斜面の軟弱な表土の上に建設する計画となって
おり、地下水の作用・地盤の沈下・滑動などによる施設の破壊の可能性が否
定できない、ということになります。
何よりも信じられないのは、大田市が調査の結果知り得たこういう情報を、
住民にはいっさい知らせず、「安心だ。安全だ」と言い続けてきたことです。
こんな状況で、住民の安全性を無視して強行に計画を進め、予定通り実施設計、着
工に踏み切るとしたら、まったく言語道断としかいいようがありません。
★「記3.」で述べた既存三処分場の水質検査結果について。
大田市に、既存の三つの処分場(大田、仁摩、温泉津)に関してこれまで発生した事
故がありますかと聞いたところ、安全に維持管理されており、事故はありません、との
回答でした。
念のために、既存の三つの処分場(大田、仁摩、温泉津)の水質検査の結果データを
調べてみると、たいへんなことがわかりました。
温泉津の処分場で平成13年度に排水基準を上回るダイオキシン類を検出。
大田処分場でも、平成15年度に地下水水質基準の2倍を超えるダイオキシ
ン類が検出されている。
さらに、県央保健所の立ち入り検査報告によると、仁摩処分場では、入手記録の
平成17年以降、毎年、地下水環境基準を超えるヒ素の検出が報告さ
れている。
温泉津処分場においても、平成18年には、ヒ素および鉛が地下水環境基準
を超える値を示しており、引き続き平成20年、平成22年にも基準
値を上回るヒ素が検出されている。
これは疑いようもなく処分場の事故であり、環境基準値を超える有害
物質流出の事故を市民に公表することもせず、これでは適正な維持管理がなされ
ているとはいいがたい。
特に、三施設とも海の直近に配置されているため、海洋汚染による近辺の魚介
類への影響や、地下水等の汚染の進行が非常に危惧される。
★「記4.」では、これらの厳正な調査ならびに市民への結果の報告を要望した。
1.設計変更前に作成された環境調査書は、ボーリング位置、観測井の位置等、
設計変更後の計画の妥当性を調査する内容になっておらず、無効である。
よって、再度、設計変更後の計画地を基準にした環境影響調査を行い、そ
の調査結果をすべて公表することで、施設の構造上の問題ならびに、想定さ
れる危険性を、あらためて住民に説明をすること。
2.平成21年12月に報告された地質調査において、計画地の基礎地盤が非常に
脆い地盤であることが記載されているが、この調査報告書も住民には公表さ
れておらず、計画を進めるにあたって、こうした想定される危険性について
の説明が行われていないことは、手続き上の大きな瑕疵である。
よって、再度、設計変更後の計画地を基準にした地質調査を行い、その調
査結果をすべて公表するとともに、想定される危険性を、あらためて住民に
説明すること。
3.既存の最終処分場三施設に関して、各施設に実際に事故があったにもかかわ
らず、その事実を隠蔽するような体質では、最終処分場のような危険な施設
の維持管理に対してまったく信頼がおけない。
よって、既存の三施設の過去に発生した事故の内容と原因、また、遮水工
が正常に機能しているかどうか等の現況施設の状況を詳しく調査するととも
に、有害物質の流出による、海洋汚染を含めた処分場近辺の汚染進行の状
況を詳しく調査し、これに関しては、その調査結果と今後の対策を、全ての
大田市民に説明すること。
この続きは、その3で説明しています。